~前編はこちら~
不意打ちでした。
自分の中では、母が車でやって来て軽く挨拶をした後の第一声は、「愛知からここまで何に乗ってきたの?」というところまで想定していましたので、車内で軽く緊張を解いて家に着いてからが本番だと思っていたのです。
まさか親父がいきなり登場するとは・・・。
と私が思ったくらいですから、彼女はそれ以上に面食らっただろうなと思います。
車に乗り込むと、彼女と父は軽く挨拶をし、しばし沈黙。
時間にして3,4分。
さて、どうしたものかと私も考えているうちに車は実家に到着しました。
家に着くと、玄関で母が出迎えてくれました。
軽く挨拶を済ませると、
「いらっしゃい。愛知からここまで何に乗ってきたの?」
という第一声。
色々とザンネンな気持ちで久しぶりの我が家に足を踏み入れる私。
さて、この先どうしたものか。
時間は既に16時。
無類の酒好きである父と素面で会話をできるチャンスはあまりない。
そう思った私は、荷物を部屋に置き、両親とMarinaの4人でお茶を飲み出してすぐに話を切り出しました。
「彼女とは今年(2021年)の7月から一緒に住んでいて結婚を考えている。まだ彼女のご両親には挨拶を済ませていないが、近々お邪魔するつもりです。彼女のご両親からの承諾を得られてから、ということにはなるが結婚式を挙げるにあたり二人の意見を聞かせてほしい。」
実は私には1つ懸念がありました。
父は贅沢があまり好きではない一方、人前で話をすることが好きな性分です。
私たちの結婚式を小規模に行うことを望むのか、沢山の参列者を呼ぶことを望むのか実際に話を聞くまでわかりませんでしたが、結果は私たちが望むものと近いように感じられました。
「まずは、お前が(Marinaの)ご両親にご挨拶をし、良いお返事がもらえたら、私たちもその後改めてご挨拶に行かせてもらうつもりだ。Marinaさんのご両親は盛大に式を挙げることを望んでいないだろうという話が本当であれば、我々も同様に考えているのでありがたい。こちらから結婚式について要望を出すことはしないから、2人の好きなようにしてくれてよい。」
ざっくりこんな感じの返事でホッとしました。
晩御飯には叔父も来ることになっていたため、込み入った話はこれにて一区切りとなりました。
若林家の家族関係は少し変わっています。
私の両親は共働きだったこともあり、私と妹の面倒は主に祖母と叔父が見てくれていました。
私は小学校高学年まで(父方の)祖母、両親、妹の5人で暮らしていました。
祖母は、お小遣いの管理、友達付き合い、食事の世話、看病、保育園・学校との連絡など身の回りのことに関するありとあらゆることをサポートしてくれました。
叔父は父の弟で、この世代の人間では珍しくずっと独身です。
自分で会社を経営しており、毎日昼御飯と晩御飯を食べに家までやって来ては一緒に風呂に入り、色々な話を聞かせてくれました。
時にはバスケ、野球、サッカー、卓球などスポーツの基礎やお祭り、釣り、将棋等の遊び方、自分が経営する会社の仕事の手伝いを通じての礼儀作法などを教えてくれました。
そんな祖母と叔父は私にとって第2の両親であり、結婚報告をする上での重要人物でした。
(祖母は仏壇越しにではありますが)その二人に素敵なお相手との結婚報告ができたことを私はとても嬉しく思っています。
少し話が逸れました。
近所に住む叔父がやって来て、両親、叔父、Marina、私の5人での晩御飯が始まりました。
スタートからプレミアムモルツを猛烈に呑み始める父。
それを見てもっと味わって飲めとツッコむ叔父。
酒が回って調子が出てきた父。
父に相づちを打つMarina。
神社について語りだす父。
父に相づちを打つMarina。
町の将来について語りだす父。
父に相づちを打つMarina。
同じ話題を何度も語りだす父。
父に相づちを打つMarina。
いよいよ始まったと思いその場で横になりスマホをいじりだす私。
私を助けろと言わんばかりに無言でアピールするMarina。
話をやめさせようとする私。
Marinaに入浴を勧める私。
入浴するMarina。
4時間のやりとりはざっとこんな感じです(というか、他の日もこんな感じでした)。
Marinaが話に付き合ってくれたおかげで父もご満悦の様子でした。
叔父が帰り、Marinaが入浴して、私と両親が3人で部屋にいる状況で私が両親にもう一度確認しました。
本当は結婚式をこうしたいとか、考えていたことがあったんじゃないかと。
父はこう答えました。
「結婚式を挙げるのはお前たち二人なんだから、お前たちがやりたいようにやってくれればそれでいい。我々が口を挟む問題じゃない。ただ、娘さんを嫁にやるあちらのご両親が気持ちよく送り出してあげられるようにしてほしい。」
わかった、と私が答えると父は寝室へ。
お風呂から帰ってきたMarinaにそのことを伝え、無事に顔合わせは終了しました。
疲れながらも嬉しそうにしている彼女の表情を見て、私は珍しく父親に感謝し、その存在を誇らしく思いました。
彼女を新潟に連れてきて本当に良かったと思いました。
そして、就寝前に隣の部屋でまだ起きていた母親と話をするとこんな言葉が返ってきました。
「お父さん、酔っていてさっきの話覚えていないかもしれないから明日確認しときなさい。」
完
おまけ~初詣~